すぎの いちを
スギノ イチヲ
1965年生まれ、広島県福山市在住。
2歳のとき、両親と兄が徳島県に転居。スギノだけが福山市の祖父母宅に預けられたことで、常に孤独感や疎外感を感じるようになる。高校1年生のとき、古書店で「つげ義春」の漫画に出会い、漫画収集に没頭するようになる。多摩芸術学園を卒業後は、福山市にあるデザイン会社へ就職し現在に至る。
人生も半ばを過ぎ、自分らしい方法でみずからの人生の爪痕を探っているとき、髪を伸ばしている理由を知り合いに指摘された際、冗談で「キダ・タローみたいな髪型にしようと思っとるんじゃ」と返答したところ、意外にも賞賛を受ける。
2017年1月22日に自宅でくつろいでいたとき、知人の返答を思い出し、ガムテープなどを利用してキダ・タローに変装したところ、酷似していることに気づく。その日から「#おじコス」とハッシュタグをつけ、尊敬する著名人に扮しInstagramへの投稿を続けている。模倣することで満たされる開放感は、スギノにとって生きる喜びとなっている。
えんどう ふみひろ
遠藤 文裕
1972年生まれ。福岡県在住。
小学校5年生と6年生のときにつくった学級新聞がきっかけで、表現の楽しさを知る。中学生になり学級新聞という発表の場を失った遠藤は、やがて誰にも見せることのない日記やネタ帳、スクラップの制作へと遠藤を駆り立てていく。
当初はノートに大量のネタを細かい字で記していたが、次第にみずからが訪れた美術館や映画館のスクラップが紙面の多数を占めるようになり、有名人やそれとは無関係の風景をコラージュした「関連妄想」の世界を楽しむようになる。現在は、櫛野展正を追いかけながら仕事の合間にスクラップ制作に勤しむ日々を送る。
本展では、これまで制作したスクラップだけではなく、実際に遠藤が各地で撮りためてきた自撮り写真を初公開する。また、書籍『アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート』で紹介された「遠藤文裕 観察日記」の後日談をまとめたノートを公開。新作のノートには、3日で婚約し結婚することになった遠藤のその後の人生が描かれている。
たくま
太久磨
1986年生まれ、香川県在住。
中学卒業後にアニメーターや映画監督などを目指し上京するが挫折。帰郷後、みずからの生き方を模索するなかで、ゴッホに憧れ絵を描くようになる。22歳で画家を目指して再度上京。貯金も尽きかけ自己否定を繰り返し上野公園でデッサンをしていたとき、勧誘を受け宗教団体Alephへ入信する。人体内に存在するとされる根源的生命エネルギー「クンダリーニ」の覚醒を目指して、仕事終わりに毎日道場へ通い、6年間出家信者を目指し信徒として修行を続けた。
やがて求める方向性の違いに疑問を感じ、29歳で脱会。木々や植物からエネルギーの存在を感じるようになり、マンションの屋上で目にしたアロエに心を奪われ、「自画像としての植物」と題した植物画の連作を描き始める。
これらの絵は、ほとんど同じ構図や色彩で描かれ、3年間で100点以上を制作。その背景には、太久磨がアニメーターや宗教団体で培ってきたアニミズムの思想や宗教観が色濃く反映されている。本展では、これまでの絵画に加え、より抽象化された新作絵画を初公開する。